2018年3月16日(金) 第199回 月例会が開催されました。
今回は、高校25期の黒井義博様に「企業不祥事は何故繰り返されるのか 三菱自動車での経験を踏まえて」と題して講演していただきました。
黒井様は、三菱商事からリコール隠し問題収束のために三菱自動車に出向されました。その際の経験を踏まえ、どこの業界でも通じる教訓を、誰にでも分かりやすいお言葉でお話くださいました。
リコール隠し問題への対応の際は、社会部記者から延々と繰り返される質問攻めに加え、官庁対応では4千人の職員に対する4万時間に及ぶ聞き取りや数十万枚の書類の調査は約9ヶ月続き、さらに、子供のいじめなどを理由に社員の離職が多発したことで、精神的にも肉体的にも非常に苦しいお立場をご経験されました。
そこでの教訓は「安全面のリスクの大きな事案は慎重に」「他者の失敗事例は見逃すな」「悪いループに入らないこと」「『この程度なら』『他社もやっている』『やらないと競争に勝てない』は禁句」ということ。三菱自動車では社員へのコンプライアンス教育を徹底しました。しかし、再び燃費不正問題として不祥事が発生したのです。
繰り返された不祥事をふまえ、これからの企業がどうあるべきかについて、ご提言いただきました。
不祥事の原因として、年々激化する競争、次々と新しい製品・サービスが出てくる中での短納期志向、高すぎる目標設定等が挙げられますが、これらはどこの業界にも共通する課題です。また、昨今の森友・加計問題にも通じますが、明確に指示を受けなくても空気が読める人が偉くなるという日本の風土(「忖度」ですね。)により、経営層が知らないところで、現場のよかれと思っての行動により不正が発生する傾向があります。
それらを踏まえ、【現場】が意識しておくべきは、安全や品質問題はもちろん、グローバルな現代は契約違反が巨大なリスクを抱えることを知っておくこと。また、自分の専門だけでなく常に外の世界に触れ、自社の当たり前が世間でも当たり前かと疑問を持つこと。一方【経営層】は、自社の能力(技術力、リソース)を正確に把握たうえで能力を超えた受注になっていないか、また、改ざんが容易な環境になっていないかを点検をすること。そして、どういう状況下で不祥事が発生するのかを理解しておくこと。との教訓を話して頂きました。
私はシステム会社勤務ですが、特に現場の意識については通ずるところは沢山あると感じます。自分や周りの行動を振り返るいいきっかけとなりました。
実際に経験された方の話を直に聞くことは、活字で読むよりも心の深くまで伝わります。
関東明陵同窓会の月例会は、あらゆる世代・業界の方達が集い、毎月交代でOB・OGが講演行うスタイルを20年以上継続してまいりました。次回、第200回を迎える前に、本日、黒井様から頂いた「自分の専門領域だけでなく、外の世界に触れること。」との教訓を、先輩後輩の皆様と改めて再確認するすばらしい場となりました。
高49期 伊熊妙子